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香川大学の授業を聴講!

8月13日から15日の3日間、香川大学経済学部の授業が豊島で行われ、島民も参加できるということなので聴講してきた。3日間を通じて「協働」がテーマ。はじめの2日はフィールドや座学で学習し、最終日のワークショップでそれまでに得た知見を踏まえて、「協働」についての映像を制作・発表するという流れ。フィールドワークやワークショップが多くてかなり実践的。こういう授業を学部のうちに受けられるのはとてもいいこと。香川大学の学生は幸せだと思う。ゲスト講師として高橋直治先生(東京造形大学得任教授)らとともに
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知人の川部良太君の名前があってなんだかうれしい。
13日は、石井亨先生の案内で産廃の現場とこころの資料館に。4月に豊島に入ったけど実は初めてです。うーむ、やっぱりすごい。想像もつかない物量。そして事件の異様さ。運動の過酷さ。環境が破壊されただけではない。誤解と心無い誹謗中傷が豊島に人の心に深い傷を残したことを改めて思い知らされる。
その後、芸術祭の横尾忠則の作品を見てから、甲生地区の片山邸や壇山を経由して唐櫃地区の公堂に。
昼食後は石井先生の講義。「共同体と自治の変遷」(3限)と「アートで地域は元気になるのか」(4限)で、どちらもかなりおもしろかった。石井さんが豊島や産廃事件に詳しいのは当然だが、越後妻有や佐久島、日間賀島、神山町などアートプロジェクトの現場にも足を運び、地元の人に丁寧に取材していることには驚いた。神山町については、いつか行きたい場所から、絶対に行かなくてはならない場所に変わった。
夕方みんなでバーベキューを食べて自己紹介、そしてグループに分かれて一日を振り返るミーティング。かなりくたくたになった。
14日は石井先生が唐櫃の清水とその下の棚田を案内してくれる。その後、グループごとに分かれて島の住民にヒアリング。藤島八十郎の家で藤崎さんに取材するグループがあったので僕も同行。藤崎さんに豊島のことや芸術祭について学生たちがいろいろ聞いていた。藤崎さんらしい思慮深い話に学生たちも感銘を受けていた様子。
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午後は香川大学の原直行先生が「豊島のミカタ講座」と題して、実際に歩きながら豊島の見所を解説してくれた。とくに興味深かったのは、道にはタテの道とヨコの道があるという話。タテの道は上に上がる道、すなわち山に通じる道、あの世につながる道、信仰の道。ヨコの道は集落と集落を結ぶ、交易の道。藤島八十郎の家の近くにはタテの道とヨコの道が交差する地域の重要なポイントがあることも教えてもらった。
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歴史の知識があると地域を歩くのがおもしろくなる。豊島を理解する上で重要な石と水についても原先生は丁寧に解説してくれた。棚田を歩いているときも、コシヒカリとヒノヒカリの違いなど、農業について知っている人には基本的な情報だと思うけど、そういう植物の特性と土地のあり方の関係を見ていくのはやはりおもしろい。ちなみにコシヒカリは背が高くなるので台風の前に稲刈りをしないと倒れてしまうそう。だからコシヒカリの収穫は終了している。背が低くて比較的風に強いヒノヒカリの収穫はこれからだそうだ。
原先生はまだまだ引き出しがありそう。僕はすっかり原先生のファンになってしまった。今後もいろいろ教えていただきたいと強く思った。
公堂に戻って西成先生の景観学の授業。そして夕食の後、ディスカッション。
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この日は前日より島民も増えた。学生たちは、まだ明確な言葉にはなっていないけれどフィールドから何かを得ているようだ。島民と学生のディスカッションで、僕は島民側に。にわか島民なのでなんだか申し訳ない。島の人にも、学生にも。でも、そんな中途半端な立場がもっともおちつく妙な性格であることも確かなのだ。40数年ぶりに豊島に戻って生活を始めた人の「街にはなにもない」という言葉に深く共感。もちろん世の中の多くの人は反対に「東京にはなんでもある」と言う。でも、その「なんでも」の99.9%は商品だ。商品としての食べ物、商品としてのアート。
15日は映像ワークショップ。題して『いま・ここにある協働をみつける』。ワンカット無編集の映像で「協働」をテーマにした映像を制作し、夜に島の人も招いた公開の講評会が行われた。
僕は島キッチンを取材するグループに同行。はじめはどうなることかと思ったが、このグループはねばり強く取材していた。それにしてもこの課題はかなり難しい。たしかに豊島は「協働」が行われている。多くの地域が近代化によって失った「協働」が残っているのが豊島の財産だ。けれども、それをワンカットの映像で示すとしたら僕は何を撮影するだろうか。
というわけで発表会。
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映像の出来に差はあっても、どのグループもそれぞれ努力していたのがわかる。全体的に先生たちの講評はかなり厳しいような気がした。でも、その厳しさが大切。何も見えてない、何も知らないことを自覚するのが大学時代。情けないのは僕もいまだにその段階だということ。まだまだ何も見えていないのを再確認した3日間だった。島の人が厳しくも暖かい目線で学生たちを見ているのがよかった。豊島の人は理解されないことに寛容だと思った。誤解には慣れているからだろうか。その優しさ、あたたかさの裏には悲しさがある。悲しいけど明るい。問題はあるけど、希望もある。島民自身でなんとかしてきた島。
それにしても豊島の人たちの知的な関心の高さには頭が下がる。その知的関心欲は学業のためのものではなく、島の生活による経験に基づいているのだ。
授業が終わったのは22時くらい。その後、石井先生や高橋先生たちとビールを飲みながら芸術祭や豊島についてあれこれ話した。高橋先生の熱い気持ちや、川部先生がワークショップの進め方をすごく反省していることに感銘を受けた。あっという間に深夜3時に。さすがに倒れるように眠りました。