カテゴリ:八十郎をつくる三十郎の日記( 46 )

 8月4日は第1水曜日なので、月に1回資源ゴミの日。
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朝早く、空き缶やビンを収集場所にもって行った。すると、近所のおばちゃん2人が、ゴミの分別をしていた。当番制みたい。都市部では自治体が業者に委託して行っていることも島の人たちは自分たちでやっている。それは必要にせまられてのことかもしれないけど、はっきりいって圧倒的に美しいことだ。僕は掃除が下手なので、よけいにそう思う。ちなみに資源ゴミの収集は行政が行っています。調べたらアルミ缶を小学校で回収しているそうで、地域の老人会がそれに協力しているそうです。たしかにアルミ缶も分別して、業者にもっていけばお金になる。学校の予算が少ない地域では重要な活動資金なのかも。それを地域の老人たちが手を貸しているということのようです。
もちろん、僕が過去に住んでた地域でもゴミ収集場所の清掃はその近所の人が行っていた。しかし、豊島の場合はできることは自分たちでやるという意志と助け合いの意識の両方がしっかり根付いているのだ。
 だいたいは捨てる人が分けて置いてくれているのだけれど、それでもアルミ缶の中にスチール缶が混ざっていたり、缶の中に飲料が残っていたり、瓶の色が間違っていたり、おばちゃんたちはけっこう大変そう。そもそも瀬戸内国際芸術祭という大きなイベントがはじまってゴミがものすごく増えている。結局、僕も微力ながらお手伝いをすることにした。
 空き缶のアルミとスチールの分別を確認していると、やたらにタバコの吸殻が入った空き缶がいっぱいでてきた。おばちゃんたちも「困るなぁ…。こんなことなかったんやけどな」と言っている。タバコを吸う人はいても、吸殻が入った空き缶が資源ゴミにこんなにたくさん出されたことはなかったそうだ。
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おばちゃん2人と僕で、けっこうな苦労をして缶から吸殻を出す。おばちゃんは僕が芸術祭が理由で島にいるのを知っているので、芸術祭のことをあまり悪くは言わない。僕には「手伝ってくれてありがとうね」と言ってくれる。僕は島の人の心に触れてうれしい気持ちと、やたらに仰々しい芸術祭に対しての複雑な気持ちで言葉がでない。
 ゴミが増えて地元の人が苦労する芸術祭は美しくない。実行委員会は資源ゴミを出す日の前日ぐらいこえび隊を島に宿泊させて、ゴミの整理を手伝えばいいのに。
 藤さんの言う「誰と」の関係のことを考える。「誰と」一緒に行うかで、同じこともたのしかったりつまらなかったりする。僕は島の人が好きなので、ゴミ分別もたのしい。ここで一緒に作業した経験は僕にとっての財産。突然、今は青森にいる藤さんや一緒に苦労してくれたこえび隊の仲間のことを考える。彼らだったら島の人と行う掃除をきっとたのしんでくれたと思う。あるいは、東京や桜島で一緒に苦労した仲間たち。僕の失敗を許し、見守ってくれた人たち。彼らなら島のおばちゃんの心が傷つくことを僕と一緒に憂い、ただ黙って掃除に参加するに違いない。
 結局は審美的態度の問題なのかもしれない。ゴミの出し方の酷さを嘆き、それでも休まずに動き続け作業するおばちゃんの心は美しい。そういう人たちに目を向けず、来場者の数を誇っていては芸術祭は美から遠ざかってしまう。
 心美しき人たちと作業した時間は充実している。島の人たちにひたすら感謝です。いつも、本当にありがとうございます。
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 今日は久しぶりにこえび隊が来てくれた。なんとハワイから。アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれたエイミーは、ハワイの高校生。しっかりとした意見をもって話す様子に、すっかり大人だと思ってしまった僕は、途中で高校生と教えてもらいびっくり。毎夏、祖母のいる日本に来るというエイミーの日本語はかなり自然だけど、本当の母語は英語。どことなくカタカナで表記したくなるカラフルな音の日本語を使う。「おっとっと」ではなく「オットット」とか、そんな感じ。
 アート系の高校に通っているというエイミーは受付の合間にドローイングやスケッチをしてくれて、八十郎の家をたのしんでくれた。
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 高校を卒業したらどうするの?と訊くと「たぶんメインランドでデザインの勉強するために大学にいきます」と言う。その「メインランド」という島からの視点の単語が、トゲのように僕の心に刺さる。でも、もちろんエイミーには普通の言葉。それからもエイミーはお客さんがいないときにはダンゴ虫やイモ虫を無邪気にいじっていた。
 そして昼食の後の穏やかなひととき。のんびりしていたら、突然の放送音。近くで行われるイベントの告知。やたらに大きな音、大きな声。過剰に明るい口ぶりで案内されるイベントへの誘い。驚くエイミーと毎度のことにうんざりする僕。エイミーは「何、これ?」という。イベントの案内であることを説明すると、「島の人に迷惑デスネ」というエイミー。結局「そうなんだよね。これをやっている人も仕事だからやっているだけなんだけどね」という僕のとてもつまらない発言で会話は途切れた。たっぷりの沈黙の後、エイミーが「戦争みたい」とつぶやく。僕らは話題を変えた。危険地帯を避けて歩くように。
 やがてハワイのワンダーガールはどうしたことかセミの抜け殻を集めだした。手のひらいっぱいの抜け殻を持って歩く高校生はまぶしいくらい健康的。ちょうどいい空き瓶がなかったので、ビワの種が入っていた瓶から中身をとりだして洗った。瓶が乾いたらセミの抜け殻を入れるためだ。抜け殻はとりあえず受付のテーブルの上に山にしておいた。
 豊島タワーをつくってくれた藤崎さんが今日も来てくれた。エイミーがハワイに住む日系人だということから、なんとなく再びハワイや島の話に。「メインランド」という言葉に興味をもったことを僕がエイミーに告げると、「だって(メインランドを)アメリカって言うのは変だから。でも、メインランドの人にはメインランドと言っても通じない。わかってくれない。」とエイミー。
 「豊島の人も、高松を本土と言うからな」と藤崎さん。だけど、藤崎さんの両親が九州出身で、藤崎さんはいわば豊島の移民2世であることを、藤崎さんも僕もエイミーに説明しなかった。あまりに話がややこしくなるような気がして。
 それでも、どこかと隔たった小さな土地=島について3人が同じ時間に考えたことは確かだ。ごく短い時間だったけど。3人の考えていたことは、きっとそれぞれ違う。僕が考えていたのは、「メイン」ではない場所、メインランドの外側でありつつ、また別のどこかとの間にある場所。八十郎の家に貼ってある豊島の唄がもともとはハワイの唄で、それに日本語の歌詞をつけたものだということ。あるいは、豊島で藤崎さんに出会えた不思議。そしてエイミーの存在自体が邦と邦の間で揺れる「シマ」であること。人の心が島であること。悲しいでもなく、うれしいでもない。しかし、そのどちらでもある島という状態。メインランドから離れた場所で生きる選択をした人たちと、その子どもたち。
 おもしろいことに、それからテーブルの上においてあるセミの抜け殻に話題が移った。「それ、どうしたの?」という藤崎さんに、エイミーはついさっきこのあたりで拾ったことを話す。「ハワイにはセミがいないんです。メインランドにはいます。日本のセミとは違うけど」と言うエイミーは、藤崎さんと僕にゲームをしかけているような気もする。なんとなくだけど。でも、ただ豊島と八十郎の家を無邪気におもしろがっているようにも見える。
 しばらくして、仕事に戻るという藤崎さんは帰り際に「あの抜け殻はなんというセミか知っていますか?」と僕とエイミーに問いを発した。首をふる僕らに、藤崎さんは「クマゼミです」と教えてくれた。その呼称は体の大きさによるものだろうということ、鳴き声がミンミンゼミとは違うこと、関東にはいないだろうけど温暖化でその生息地も変化している可能性があることなどが話題に上った。
 藤崎さんが帰った後もエイミーは八十郎の庭を歩きまわり、小さな虫をつかまえてはたのしそうにしていた。エイミーがサンダル履きのまま草むらの中に入っていったので、ムカデに注意するように言うと、「ウヒャー」と叫びながら走って逃げてきた。ワンダーガールもムカデは嫌いみたいだ。「ハワイにもムカデがいっぱいいます。ダイキライデス」断定的な意味の部分が平板な音で強調されておもしろい。
 あっという間に夕方。瓶はまだ完全には乾燥してなかったので、僕は瓶の中にタオルを入れて拭いてから、エイミーに手渡した。クマゼミの抜け殻を瓶の中に入れてテーブルの上においたエイミーは、てきぱきと荷物をまとめてから大きな声で「アリガトウゴザイマシタ」と言って去っていった。
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今日の作業の休憩中のテントの光。木々の影がテントに映りこみ、思わず見とれてしまう美しさ。
島は光がいい。島をかこむ海が鏡のように光を乱反射するのに比較して、島には陽光がそのまま差し込むように落ちてくる。島はまるでレンズのように光を集める。島は島そのものを誇ることよりも、世界をより美しく見せることに貢献している。島のおかげで知覚できる世界のあり方。
映像が、ここではないどこかの景色、光の染みだとしたら、島は存在そのものが映像的だ。常に海によって隔てられ、人に対岸を意識させ、孤独であるがゆえに隔たる土地と呼応し、絶対に島の内部にとどまらない可能性をかかえている。今ここにはない可能性をもっているのが島だ。
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言語は認識の道具。ヒトの世界を認識は言語によって行われる。地名は世界の認識のあり方。
瀬戸内海の女木島と男木島という対の地名が、土地の孤独とつながりを示している。連鎖する関係によって土地が成立していることを示している。ひとつの島の1という個が、すべてをつなぐ海によって連結し、数え切れないほどの複数に連なる。自分の立つ土地とは別の土地を常に見ながら暮らす人たちがいる。
そして豊島は字義通りの豊かな島。山があり、森がある。島には珍しく水があふれる。鳥が舞う島。豊かな島に学ぶことはいくらでもある。だけれども人の一生には常に限定性、一回性がつきまとう。だからこそ、別の誰かに学ぶことは限りがない。旅人と移り住む人は島の人に学ぶべきだ。島の地水火風の恵みを体ごと受け取り、よりよく活かす人たちの存在が島の呼吸をつくっている。契約書による所有とは違う、土地を自分のものにしていくのは体験が約束する。歩けば歩くだけ土地は自分に近づいてくる。知れば知るほど、わからないことも増え、別のどこかとつながっていく。
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馬場邸のお風呂場についているハンドル。ステキです。今流通しているのとは違う、おもしろいもの、ステキなものがあちこちにあります。素材もデザインも今流通しているものとの違います。古いからいいというわけでもないのですが、何故か魅かれてしまう、ガラクタのようなもの。いったいこういったものが美しく見えるというのはどういうことなのか…。
しかも、それってのは一回価値がなくなって、だからこそ流通しなくなり、存在する個体数が減少する。そして、少ないことが価値を生むという逆説的な不思議。
それにしてもこのハンドル、何かにつけてみましょうか。ハンドルを回すと八十郎の家で何かがおきる…とか。
ともかく、ひたすら掃除と分類の日々です。

こえび隊のみなさんを納屋の屋根裏部屋から記念撮影するのが恒例になりつつあります。おつかれさまでした。
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馬場邸2階の畳をはがしました。
そして午後からは藤さんも登場。どんどん作業が進みました。木材が弱っているところ、頑丈なところ、馬場邸の構造が現れてきました。
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5月31日、豊島に戻ってきました。ちょっといない間にすっかり夏の暑さ。
昨日は唐櫃の浜でボルタンスキーの作品説明会があるというので、ちょっとのぞいてみました。

ボルタンスキー氏や北川フラムさんが登場して、説明してくれました。瀬戸内でボルタンスキー氏がつくる作品は心臓音のアーカイブだそうです。この作品・施設ではアーカイブされた心臓音を聞くこともできるし、自分の心臓音を録音・記録することもできるそうです。そして、すでに約1万5千人の音を録音しているそうです。なるほど…。たしかにすごそう。
心臓の音というのはいいモチーフだと思う。その人その人で固有のリズムをもち、しかも変化する。終わりのない反復を繰り返すようで、いつか必ず終わる音。自分の内側にありながら、環境の影響を受ける。
僕にとっての本質的なドラム奏者ミルフォード・グレイブスの「心臓の音を聴け」という言葉を突然思い出した。まだ20代のころ「心臓の音を聴いてドラムを叩く」という概念は、なんだかとても不思議で魅力的な感じがしたし、普段は忘れているけど今でもそのときの感覚は記憶されているわけだ。まぁ、ボルタンスキーの作品とは関係ない話ですが…。
それにしてもボルタンスキーって、いい感じのおじさんですね。説明会が終わってから、会場の外でうろうろしていたらボルタンスキーさんと「いちご家」の多田さんファミリーが談笑していました。


なんとなくハッピーな感じでしょ。
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今日はこえび隊と馬場邸の掃除です。
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早朝の家浦港。こえび隊が来るのを待ちます。こえび隊とは瀬戸内国際芸術祭のボランティアの人たち。なかなかおもしろい人たちが参加しています。
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今日、一緒に掃除をしてくれたこえび隊の3人。やっぱりひとりで掃除するより仕事が進みます。それに、みんなで体験を共有するのがとっても豊かな。島の人が、石を積んだりコンクリートを打ったり、島でやらないといけないことを業者に頼むんじゃなくて自分たちで作業するのと同じかな。
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馬場邸の納屋の土間にあったものを外に出しました。約3畳ほどの小さな空間にこんなにたくさんのものが入っていたとは…。掃除して整理するとすっきりしました。
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午後、海岸に移動して各自気になるもの拾ってみました。けっこうおもしろいものが発見できました。これはときどき行いたい。豊島の海にどんなものが漂着するのか。島は閉じているように見えて、常に外部にさらされているのがよくわかります。こえび隊にもただ作業をしてもらうのではなく、できるだけ豊島を体験してもらいたい。島の人たちと話したりする時間もつくりたいところです。今後の課題かな…。
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公民館で豊島村誌を見せてもらいました。
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雨が降っているので午前中は読書をしてみました。
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