カテゴリ:豊島で出会った物語( 1 )

いくつになっても子どもの心を失わない人がいる。
雪が降る北の港街から、瀬戸内海の島に嫁いてきた。
どんな場所かもよく知らずに、強い好奇心で「どんなところなんだろう」と思い、大家族の農家の一員になった。知らないところに飛び込み、島の生活を体ごと体験した。今もしている。

家事と子育てに夢中だったから、30年以上住んでいる島でも歩いていない場所はずいぶんある。
そして今、島の岡にある長いこと空き家だった納屋を訪れ、はしごに登り瀬戸内海を見下ろしている。「わぁ、すごい!」と少女のように喜び、パノラマの景色にいつまでも見入っている。
ようやく梯子から降りてきたその人は、見たばかりの島の眺めのすばらしさを目を大きくして話してくれる。その表情が、僕の心を豊かにしてくれる。大きな目は好奇心の大きさ。
「こんなに長く住んでいるのに、なんにも知らないのよ」と恥ずかしそうに笑う。
その笑顔はとてつもなく気前のいい、無条件に幸福な贈り物。僕もいっしょに笑う。
後になってからその幸せをそれほど多くの人と共有できていないことに気がついてなんだか悲しくなり、それからまたあの大きな目の笑顔を思い出し、笑ってしまう。

島から見る世界はとても美しい。

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